カーテンレールの位置によって、部屋の印象もカーテンの印象も大きく変わってきます。
下の絵は天井高240㎝、サッシ高200㎝(6尺6寸)の標準的な一戸建て住宅の壁面です。
Aは窓枠上端からカーテンレール上端までが約10㎝、Bは窓枠もしくは直上、Cは窓枠と天井の中間、Dは天井いっぱいに取付けた様子です。 このようなサイズの窓・壁面の場合、Aのような10㎝から15㎝程度の高さが丁度よい取付位置かと思います。Cでもいいのですが、やや中途半端な感じがします。Bは意匠性は気にしない、取付けられない等の理由が無い限りやめた方が良いでしょう。この位置だと光漏れ、直射日光を浴びるため樹脂フックが劣化する等の実害もでてきます。
Dの位置はやや微妙です。“カーテンは高い位置に付けた方が良い”“その方が天井が高く感じる”“部屋が広く感じる”ということをよく聞きますが、実際にはその逆に感じることもあります。広く・高く感じるのは、ある程度カーテンから離れて見た場合で、広いスペースが必要です。色柄にもよりますが、狭い部屋やカーテンのすぐ近くに常時いるエリアがある場合は、圧迫感がありうっとうしく感じることもあります。もちろん個人差もありますが。
また、Dの位置の場合、窓枠から天井までの壁面が大きく見えていることにも、違和感を覚えることがあります。一般的にはほとんどレースを併用(E)しているので、気にはならないかもしれませんが、気になる方はいっそのことカーテンボックス(F)にしたほうがよいのではないでしょうか。後付けタイプのカーテンボックスなら、カーテンレールと同様にカーテン施工店で取り付けられます。絵のような装飾タイプのレールよりも違和感が少なくスッキリと感じます。
下の絵は腰高窓のカーテンレール取付位置とカーテン丈の関係を示しています。
左の列G・H・Iはレール取付高約10㎝、右の列K・L・Mは天井付けのカーテンボックスで、すべて同じサイズの窓です。
腰高窓の場合、一般的に窓枠の下15~20㎝まで丈を伸ばすと言われています。GとKがその様子を示していますが、どちらがバランス的に自然な形に見えるでしょうか。Gはよく見慣れた景色という感じですが、カーテンボックスのKの方はやや違和感があります。KとMを見比べるとその原因がわかります。窓枠上の寸法約30㎝にたいして、Kの窓枠下寸法は約18㎝、Mは約30㎝です。Kは視覚的な重量バランスが上方に片寄っているので、落ち着きのない印象を受けるのです。Mのように上下同寸法もしくは下が長い方が、安定した形に見えるはずです。
同様に上下の寸法を踏まえて考えると、Iはやや長めかな、Lはかなり短いといった印象です。HはLよりは自然ですが、窓枠下に机を置くというような事情が無い限り、Gに近づけた方が良いでしょう。H・L位の丈だと、折り返した裾の縫目が外からも見える。窓を開けているとカーテンが風で持っていかれる。といったデメリットもでてきます。
カーテンの丈を窓枠下に何センチ伸ばすかは、一律に○センチという決め方よりも、窓枠上の寸法も考慮して決めるのがより良い方法でしょう。また、天井の高い部屋で、窓自体の高さ寸法が長い場合は、全体のバランスを見てさらにプラスする必要があるでしょう。
腰高窓で丈を床までにする場合はどうでしょうか。すること自体は『欧米では当たり前』『保温性が上がって省エネにも有効』『掃除機かけるときにジャマ』など、いろいろと聞きおよびますが、条件によっては不似合いなこともあります。
JとPはレール高さが同じで、窓高さと窓枠下の比率が逆転しています。Jはカーテン丈の55%が窓の高さで、Pは45%です。形として安定して見えるのはJの方だと思います。Pのように窓下の壁より窓の方が小さいと、カーテンが不自然に感じられます。この場合は、無理に床まで持っていかないようにするか、Oのように上を伸ばして少しでも帳尻が合うようにするかの対応が必要です。
腰高窓で丈が床まで場合は、窓枠下部より上のカーテン寸法が下の寸法を上回るように設定すると、自然で安定した形になります。
また、下の肘掛窓(床に座った時に肘が掛かる位の高さの窓 40~50㎝)の場合は、窓高さ自体の丈が長く、枠下に伸ばす寸法も長くした方がよいので、必然的に床に近くなり、Rのように床までもっていくのが自然です。Qの丈だとやや寸足らずの印象を受けます。
水平方向に関しては、レールの幅をS・Tのように窓枠よりも広くとります。このレールのオーバーラップ(壁とカーテンの重なり代)の数値は、一般的にいわれているものに多少のバラツキがありますが、片側10~20㎝程度としていることが多いようです。広くとるメリットは、カーテンの溜りをなるべく窓よりも外側へ持っていき、採光面積を多く取ること、窓をより大きく見せることなどが挙げられますが、実際には、この数値はもう少し小さくなっています。
その理由の一つにエアコンや家具等の障害物によるものが挙げられます。一般住宅では、窓の横の壁面が3尺(約91㎝)程度の事が多く、そのスペースに幅80㎝前後のエアコンを設置すると、Uのように窓横のスペースが5~10㎝程度しか取れなくなってしまいます。このとき装飾レールだとキャップの選択肢も限られてしまいます。
また、多用されている一間幅(約182㎝)サッシの窓枠幅寸法約165~170㎝に、理想的な両側のオーバーラップ分を足すと、2メートルを超えてしまい、カーテン・レール金額が一段階高くなってしまうこともあります。
それらの事情により、実際のオーバーラップ値は10㎝前後になることが多いようです。理想を言えばきりがないのですが、できればリビングや大切な部屋は、カーテンをきれいに見せるためにも、建築計画時に天井埋込み型などのハウジングエアコンを織り込む等の、カーテン用スペース対策をしっかりとして、最終段階でのエアコン対カーテンの陣取り争いを避けるようにしたいものですね。